2024.11.22
エンタメ系SVOD以外も!?動画配信収益モデルのあれこれ(前編)
近年、さまざまな動画配信サービスがリリースされて、日常的に利用しているというユーザーの声を耳にすることも増えています。読者の皆さんの中にも、既に一ユーザーとして動画配信サービスを利用している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんな動画配信サービスですが、どのような収益モデルで運営されているか気になりませんか?
今回は動画配信に係る収益モデルを解説しつつ、最近のトレンド感をお伝えします。
代表的な各収益モデルについて
一般的によく目にする収益モデルには、一体どのようなものがあるのでしょうか。以下に、従来の代表的なモデルを紹介します。
PPV
Pay per Viewの略称で、動画コンテンツを視聴する分のみ料金を支払う課金方式を指します。主に以下の2種類のモデルに分類されます。
TVOD
Transactional Video on Demandの略称で、日本語ではレンタル型動画配信などと呼ばれます。Amazon Prime Video・TSUTAYA TVのように、視聴したい動画コンテンツに対してレンタル代として料金を支払うことで、指定された一定の期間のみ視聴できるサービスです。
2000年代初頭、ブロードバンド回線の普及に伴う家庭でのインターネット通信環境の発達を背景に、店舗でレンタルビデオを借りてその後返却する手間や在庫切れの心配がないことを売りに、「自宅でレンタルビデオ」などのキャッチコピーとともに普及し始めました。
従来のレンタルビデオと比較して、視聴者にとっては、テレビ・パソコン・スマートフォンなどの様々な端末で、好きな時に好きな場所で手軽に動画コンテンツを楽しめることが特長として挙げられます。サービス提供企業にとっては、ドラマやアニメの複数エピソードのセット販売やDVDなどのパッケージメディアと独立したリリースウィンドウの設定など、商品を柔軟に構成できることもその普及の一因となりました。
一方で、TVODの収益モデルは、単体で十分な訴求力を持つキラーコンテンツや、劇場公開から間もない新作コンテンツの調達に多額のコストがかかります。また、収入が視聴者の動向に左右され易いなどの課題もあり、単独で安定した収益の維持が難しいともいわれています。SVODや多チャンネル放送などの定額制サービスへの加入促進やサービスのブランド力向上のためにTVODを上手く活用することが、成功のためのカギとなる場合が多いようです。
EST
Electronic Sell Throughの略称で、日本語では動画配信販売や視聴権販売型動画配信などと呼ばれます。iTunes・Google Playのように、購入した動画コンテンツが端末にダウンロードされ、その後いつでも視聴できるサービスです。
現在普及しているESTの用途とはやや異なりますが、2000年代に流行した携帯電話の着ムービーや着モーションの配信は、携帯電話の飾りつけの一種として買い切りで永続的な所有権を有するという意味においては、広義のESTといえるでしょう。その後のスマートフォンの登場やゲーム機の多機能化などに伴い、純粋に動画・音楽のコンテンツそのものを視聴する目的でも、ESTは徐々に普及してきました。
通信環境が現在ほど整っていなかった時代には、ダウンロード配信の特性を生かして高画質な動画コンテンツをどこでも視聴できることがESTの大きな強みでした。現在ではそれに加えて、パッケージメディアの代替として無期限に動画コンテンツを楽しめる安心感を強みとしてESTを活用するサービスも増えてきています。また、近年ではデジタルコピーのようなダウンロード配信とストリーミング配信の併用により、より多様な端末で手軽に視聴できるESTも登場しています。
ESTの収益モデルには、TVODと同様の課題の他に、端末にダウンロードされた動画コンテンツを不正な複製から保護するためにDRMの導入が必須要件となることが多く、サービスの導入や運営にかかるコストが膨らむ傾向があるといった課題もあります。一方では、ESTの動画コンテンツの相場はTVODの場合の数倍程度と高価であるにもかかわらず、無期限に動画コンテンツを楽しめる安心感や通信環境に依存せずオフラインで視聴できる利便性などの付加価値に支えられ、着実に視聴者へ浸透してきています。
SVOD
Subscription Video on Demandの略称で、日本語では定額制動画配信などと呼ばれます。Netflix・Huluのように、月額など一定の料金を支払うことで動画コンテンツを好きなだけ視聴できるサービスです。
TVODが普及し始めたオンデマンド配信の黎明期に、限られたジャンルの少数の動画コンテンツの見放題パッケージとして、当初はTVODのオプションの位置付けで登場しました。その後、テレビ番組のキャッチアップサービスなど、多様なジャンルの多くの動画コンテンツを見放題の枠で配信する様々なサービスの登場に見られるように、従来はBS・CS・IPTVなどの放送型の映像配信サービスの専売特許であった「全てのコンテンツが定額で見放題」という特長と「好きな時に好きなものを」というオンデマンド配信の利便性を組み合わせた訴求力の強いサービスとして本格的に発達しました。
TVODと比較して、視聴者にとっては、一定の金額を支払うだけで安心して好きなだけ様々な動画コンテンツを楽しめること、最近ではサービスオリジナルの動画コンテンツを視聴できることもその特長として挙げられます。サービス提供企業にとっては、見放題となる動画コンテンツの豊富さやサービスオリジナルの動画コンテンツなどの訴求により会員を確保し、その会員から得られる安定的なストック収入をもとに、さらにサービスに力を入れて集客を活性化させるという流れができます。
今後も継続的な成長が予測される動画配信市場において、特にSVODの成長は著しく、動画配信市場全体を牽引していくことは間違いないと見込まれています。一方で、サービス提供企業は、動画配信戦国時代と呼ばれる昨今の状況の中、会員を継続的に確保するためのサービスの差別化要素を求められています。それぞれのサービス提供企業は、契約期間や料金プランの選択肢、特定ジャンルの動画コンテンツの豊富さ、サービスオリジナルの動画コンテンツなど、様々な工夫により独自の強みを訴求しサービスの拡大を図っています。特に最近では、サービスオリジナルの動画コンテンツは、アカデミー賞を受賞して話題となるなど、ますますその存在感を強めています。
AVOD
Advertising Video on Demandの略称で、日本語では広告付動画配信などと呼ばれます。TVerやYouTubeのように、再生前や再生途中などに広告を表示することで、動画コンテンツを無料で視聴できるサービスです。
AVODは、SVOD・TVOD・ESTに比べて後発で登場しました。2010年代に入り、様々な動画広告サーバーと動画プレイヤーの相互運用を目的に策定されたVAST(Video Ad Serving Template)という動画広告配信の標準規格が、Google・Adobeなどの大手企業のソリューションに採用されることで急速に普及しました。
VAST規格に準拠することで、視聴者の行動履歴や時間帯、地域、さらには年齢層や性別に基づくセグメントなどの属性によりターゲティングされた動画広告を、前回広告が表示されたタイミングやこれまでの広告の表示回数に基づいて、今回は広告を表示するしない、どの広告を表示するかなどを配信制御して、オンデマンド配信される動画コンテンツの任意の位置に挿入できます。また、表示された広告が最後まで見られた、途中でスキップされた、関連する商品のページへ遷移した、その結果商品を購入したなど、視聴者の行動を詳細なトラッキングも可能です。ターゲティングによる視聴者と広告のマッチング、配信制御による過度に煩わしい不要な広告表示の抑制、トラッキングによる詳細な効果測定など、視聴者にとっても広告主にとってもメリットがあるため、多くの無料サイトやアプリでAVODが採用されるようになりました。
従来の民法テレビの収益モデルに視聴者のターゲティングやトラッキングなどの動画配信に特有の付加機能を組み合わせたAVODは、テレビ番組のキャッチアップサービスだけでなく、CGM・SNSなどのインターネットメディアでも積極的に採用され、その市場は既存メディアを脅かす勢いで急速にそして継続的に成長しています。AVODでは、広告主や広告代理店から出稿される広告の料金がサービス提供企業の収入となりますが、サービス提供企業が自社で純広告を受注することが難しい場合には、アドネットワーク事業者が受注した様々な広告が集約されるアドネットワークへの参画により、ネットワーク広告によるマネタイズも可能です。
実サービスの代表的な収益モデル一覧表
では実際に、各動画配信サービスがどの収益モデルで運営しているのか、一覧表にまとめました。
どのサービスも各収益モデルを組み合わせている中で、その多くがSVODを中心として運営しているように見受けられます。また、AVODも一覧表の中では数が少ないものの有名なサービスばかりで、他の収益モデルに引けを取らない存在感があります。
代表的な各収益モデルの特長を知ろう!
さまざまな動画配信サービスがリリースされて、収益モデルも着目されることが増えてきました。各収益モデルの生い立ちやサービス提供企業・ユーザーへのメリットなどをお伝えすることで、既に動画配信サービスを提供している、または提供を検討している読者の皆さんのサービスのお役に立てればと思います。
次回はエンタメ系以外の収益モデル事例を紹介しつつ、最近になって勢いをつけてきたモデルについてもお伝えします。
▼後編はこちら
この記事の監修者: 動画総合研究所 編集部
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