2024.11.29
動画とブラウザのいい関係(前編)
動画を配信するにあたり、Webブラウザと良好な関係を保つことは、とても重要といえます。動画も正常に再生されているし、ブラウザの仕様に適切に対応出来てるよね!と、問題が生じていないうちは、考慮が行き届きにくい部分でもありますが、ブラウザや配信規格の仕様変更、様々な新しい技術の発展と進化が起こる中、きちんと理解しておかなければ、気付いたら古い技術を使っている!?なんてことになり、配信が出来ないという重大なリスクを抱えてしまいます。
今回は知ってそうで、実は良く知らないかも?な、動画とブラウザの大事な関係性について皆様にお話しいたします。
現在配信中の動画が、いつか配信出来なくなる日が来る…?
せっかく作った動画コンテンツ。当然、視聴してほしいですよね?
そんな大事な財産である動画コンテンツが、これから先、一部の人にしか届かない。更には、全員見られない。
まるで嘘のような話に聞こえますが、実は既に配信状況によっては一部の人にしか届いていないかもしれないのです。全員が見られないなんてことも、近い将来実際に起こってしまうお話なのです。
なんてこった!一大事。
その一例が、2017年にAdobe社が発表した『2020年のFlash のサポート終了』です。
すでに、どこかで噂程度に聞いたことのある方も多いかもしれません。
具体的にいつ、なにが起こるの?それにより、どんな影響があるの?そもそもどうしてサポート終了になるの?次の項目で、動画配信に関わる影響についてお伝えします。
時代はFlashからHTML5へ
早速本題ですが、Adobe Flash Player(以下、Flashプラグイン)は2020年にサポート終了になることがAbobe社より告知されています。
「終了って言っているけど、まだ使えているし、急がなくても大丈夫だよね?」と、まだまだのんびりなさっている方もいるかもしれません。しかし、動画配信サービスを提供している各社では公式のサポート終了期日を見据えて、Flashでの配信終了を告知していたり、既に終了しているところも多いのです。
Google chromeブラウザでは2017年1月ごろより、初めて訪問したサイトにてFlashコンテンツを表示する場合にユーザー側に許可を求める措置を取り始めたことにより、その他各ブラウザも同様の対応をしており、現在では動画コンテンツをFlash Streaming配信する場合、再生する前にユーザー側での余計な操作が必要であったりと、大切なカスタマーであるユーザーに負荷を与えてしまいかねない状況になっています。Microsoft EdgeブラウザやMozilla Firefoxブラウザなどのその他ブラウザも2020年に向けてFlashを無効にしていくことを発表しています。
これまた、なんてこった!
でも皆様、一時期Flashプラグインって当たり前のように使っていましたよね?
それもそのはず。一時期Webブラウザには、ほぼ100%を占める割合でインストールされていたのです。
Webサイトが一般家庭にも普及してきたころ、様々なサイトが作られる中で「より見た目の良い、かっこいいサイトを作りたい!」というニーズが多くありました。「リッチコンテンツ」を取り入れて、各社かっこいいサイトを制作していきましたが、当時、Internet ExplorerブラウザやNetscape Navigatorブラウザなど、ブラウザごとに仕様が異なっていたため、それぞれの仕様に合わせ、対応するブラウザの数だけサイトを構築せねばならず、メンテナンスが非常に大変でした。
そんな中、どんなブラウザでもリッチコンテンツを手軽かつ、同一の規格に則って扱うことのできるプラグインが開発されました。それが、現在ではAdobe Flash Playerと呼ばれているプラグインだったのです。
サイトの作り手は、Flashプラグインの仕様だけ気にしていれば、その先のブラウザの仕様は考慮する必要がなく、これによりサイトの構築やメンテナンスの手間が大いに削減!しかもそのプラグインは無料で配布!ユーザーを限定することなく、多くの人が利用することが出来る画期的なものでした。
その後、個人、企業など、多くの利用者にインストールされたFlashプラグインはその勢いを止めずに、どんどんとシェアを拡大していき、ほぼ100%の普及率に至ったという訳です。
めっちゃ便利じゃん!すごいぞ!Adobe Flash Player!
そう思いますよね。実際に多くの人にそう思われたため、世界中に普及したのですが、そんな完璧そうに見えるFlashプラグインにも実はデメリットがありました。
まず動画配信においては、Flash配信専用の高価な配信サーバー(※1)を購入・レンタルせねばなりませんでした。
※1
RTMPと呼ばれるReal-Time Message Protocolに対応する、ストリーミングサーバーを指します。またRTMPとは、Adobe Flash Player が音声や動画などのデータを受信するために開発されたストリーミングプロトコルです。RTMPは、現在主流となっているHLSやMPEG-DASHと違い、HTTPベースの通信ではないため、Webサーバーだけではコンテンツが配信出来ず、専用の配信サーバーが必要だったのです。
またFlashプラグイン自体に、セキュリティの脆弱性がしばしば発見されることが課題となっており、直しては増え、直しては増えの「いたちごっこ」状態でした。
そんな中、状況が大きく動くきっかけとなるとある出来事が起きます。2007年Apple社が発表した次世代モバイル端末iPhoneに搭載されるデフォルトブラウザSafariでは、Flashに対応しない方針を表明したのです。当時、Flashプラグインはタッチコンテンツに対応していなかったこともあり、Apple社は代わりにHTML5の技術を使って、いずれ訪れるモバイルファーストを視野に入れた最新のコンテンツ作りを目指す方針を定めました。その中で、専用の配信サーバーいらずで動画配信出来る、新たなストリーミングプロトコル(※2)を開発しました。
※2
HLSと呼ばれるHTTP Live Streamingのことで、Apple社がFlashに対応しないiOS向けにHTML5上で動画配信をするために開発した、HTTPベースで通信が可能なストリーミングプロトコルです。
その後、iPhoneはガラケーに代わり、スマートフォンの代表格として世界各国でもシェアを高めていきます。それに順応するような形で、当初様子見をしていたAndroidもFlashをサポートをしない流れに。そうして、2011年、Adobe社はモバイルデバイス向けのFlashプラグイン開発を中止。
誰もがモバイル端末を持ち運ぶのが当たり前の昨今、モバイルファーストがトレンドとして実現し、ついに、Adobe社は2020年を以てPC向けのFlashサポートを終了することを宣言したのです。うーん。もうすぐですね。
かくして、動画配信のスタンダードはFlashプラグインが主流だった頃のRTMP配信からHTML5上でのHLS配信に移行しましたが、結果としてどの端末でも同じ挙動が出来、汎用的に普及した配信方式で、低負荷、さらにリッチなサイト構築・動画配信が出来るようになったという訳です。ユーザー視点でいうと、もはや、今の便利な視聴環境が当たり前と感じるかもしれませんね。
しかし、一時期全盛期だったFlash形式での動画配信。
「見られなくなるっていったって何をすればいいの???」
新たな配信形式に切り替えるためには今までのコンテンツのフォーマットを変更したり、配信サーバーの切り替えが必要となります。お持ちのコンテンツ量によっては大変な作業となる場合もありますが、視聴出来なくなるとなっては、背に腹は代えられないですね。。。
時代と技術の変化に適応していくことが大事!!
このように当時は最新で、とても便利だった技術も時代の変化に合わせて廃れてしまうことは避けられません。だからこそ、時代の流れに応じた対策が必要なのです。
さて、今回は主にAdobe Flash Playerサポート終了に関する背景や影響についてお伝えしましたが、次回の後編では、それ以外の動画とブラウザの関係についてお話していきたいと思います。
▼後編はこちら
この記事の監修者: 動画総合研究所 編集部
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