2024.11.29
動画とブラウザのいい関係(後編)
前編の記事では、Webブラウザと良好な関係を保つことの重要性について説明する中で、主にAdobe Flash Playerのサポート終了に関する背景や影響についてお伝えしました。
▼前編はこちら
今回は後編として、その他に近年起きた動画とブラウザの関係についての事例をいくつかお伝えいたします。
動画とブラウザの関係で近年変わってきたことは、その他にも・・・
大きな流れとしてFlash配信終了についてお伝えしましたが、ブラウザと動画配信の関係の変化は、もちろんその他にもあります。
昨今、Webサイトへの訪問者に対し、意図せず信頼していないサイトへアクセスさせた結果、訪問者の情報が漏洩してしまうなど、ユーザーに見えない通信による被害が相次ぎ生じていました。
そのような被害にユーザーが巻き込まれないようにするための対策として、各ブラウザにて規定されたルールのうち代表的なものを3つ、ご紹介します。
CORS
CORSとはCross-Origin Resource Sharingのことで、オリジン間で安全にリソースを共有するためのルールのことを指します。
事前に許可されていない通信を制限するためのWEBサーバーとブラウザ間の通信における共通ルールです。
ルールを守らずにいた場合、許可されていない通信が突如遮断され、動画が視聴出来ないというようなケースに陥ります。現在では対応済のところがほとんどですが、ルールが各ブラウザに採用され、浸透し始めた当初は影響範囲も大きく、各社一斉に対応をせねばなりませんでした。
Mixed Content
Mixed Contentとは、HTTPS(保護されている通信)を利用して配信されるサイト内からHTTP(保護されていない通信)リクエストをするとエラーが生じてしまう状態のことで、混在コンテンツとも呼ばれています。見た目はセキュアなサイトで安心していたけれど、実際裏側の通信は暗号化されておらず、個人情報ダダ漏れ。なんていう事態を防ぐためのルールです。
近年、サイト全体のHTTPS化に対応したWEBサイトの評価を高めるとGoogle社が発表したことや、Apple社がApp Transport Securityを採用したことをきっかけに、「常時HTTPS化」が一般化しつつあります。(※1)以前までは、個人情報を送信する際など暗号化が必要な特定の場合のみHTTPS通信を利用するのが主流でしたが、情報保護に対する意識の高まりを受けて全てのページが保護されている状態であるべきだね、とGoogle社やApple社をはじめとする業界のリーディングカンパニーが取り決めた訳です。
このルールを知らずに自社のサイトのHTTPS化対応をすすめていると、URL自体をHTTPSに切り替えたのに、動画配信側で利用している通信がHTTPS化されていないことに気付かず、いつの間にか動画が視聴出来ない!?一体なぜ!?などという問題が生じることも、しばしばありました。ブラウザと各サーバー間にて、どのような通信が発生しているか普段あまり意識しないが故に、いざという時の考慮が漏れてしまいがちな部分でもあるのです。
HTTPS化は現在では広まって来ていますが、まだ各社対応中であったりすることも多いので、混在コンテンツによるエラーって今でも意外と多いんですよ。
※1
WEBサイトの運営目的として閲覧数の増加を掲げることが多く、そのためには自然流入数を増やす。更にそのためには、検索エンジンにて上位に表示されることが非常に重要になってきます。Googleの検索エンジンではGoogle社が定めた指標に基づきサイトが評価され、その結果、検索順位が決定されます。サイト評価のための指標はHTTPS化以外にも様々な細かな規定が、世界的なトレンドや世の中の流れに乗っ取り、随時発表されており、より良質なサイトを運営するために適宜取り入れていくことが、とても重要です。
また、Apple社が採用したApp Transport Security(ATS)では、端末とサーバー間の通信を安全性の高いHTTPSだけに限定することで、アプリの安全性を高めるという内容のものでした。発表当時HTTP通信を使用していたアプリも数多くあったため、リリース出来ないという致命的なリスクを回避すべく、各社一斉に対応作業を行うこととなりました。
動画を配信する際にも様々な連携先との通信が発生しますが、上記のような様々なルールを守り、適切な配信環境を構築することが不可欠といえます。
またこうしたあらゆるルールは、規定された後に気付くことも多く、いざ動画が視聴できないとなった場合に原因がどこにあるのかが判断・理解しづらい部分でもあります。世の中の流れとルールや仕組みをしっかり理解出来ると、対策が打ちやすくなりますね。
自動再生ミュート
誰もがモバイル端末を持ち歩く時代となり、公共の場でもWEBサイトを手軽に閲覧できるようになってきた中で、閲覧したサイト内の動画が勝手に流れ音声が出てしまうことにより周囲の方々に迷惑がかかる、などの問題が出てきました。
例えば、電車などの公共交通機関で意図せず動画が再生されたがために音声が流れてしまい、「私のせいじゃないの!許して!」と恥ずかしい思いをしたことのある人いませんか?
私はあります。
また、そうした問題だけでなく、自動再生による音声再生はユーザーや周囲の方々にとってストレスや不満を感じるものであり、ユーザー体験(UX)を著しく損ねてしまうという大きな問題も抱えていました。
そこで各ブラウザは、ユーザーの選択肢を尊重するウェブデザインを推奨するための取り組みとして、自動再生の場合は音声をミュートに設定していないと再生を許可しない、という仕組みを徐々に取り入れ始めました。この仕組みは段階的に取り入れられていますが、こちらもスタンダードとなりつつある近年の変化です。
事情を知っていないと今まで自動再生出来ていた動画が、ある日突然再生されなくなった…!なぜ!?なんて思ってしまいますよね。
このような新たな技術・ルールの浸透、ひいては社会現象に伴い、ブラウザが進化し、その進化したブラウザに対応するために配信方式も適応せねばなりません。
そして大事なのは、こうした変化はめまぐるしい速さで日々起きている、ということです。
各社の動画配信プラットフォームも色々と細かな仕様変更を行ったりしますが、その理由の一つとして、ブラウザの最新バージョンへ対応するため、というものもあるんですね。
開発視点での余談ですが、新たな機能を追加する度、あらゆるデバイスやブラウザでの動作検証をしているのですよ!ブラウザといっても様々なバージョンがあり、更にはOSごとに挙動が異なる、なんてこともありますので、リリース前には入念なチェックが必要なんです。
動画とブラウザの関係の未来について
ここまで、動画とブラウザの関係の「これまで」をいくつかの例を基にご紹介しました。
もちろん、「これから」もブラウザの進化は続きますので、動画配信プラットフォームも対応していかねばなりません。
今回お話した「これまで」も遠い過去ではなく、ここ10年余りの間に起きた出来事なのです。
その時その時点で対応すべき内容がわかっていれば問題はないのですが、その背景を知っていると、対策がより打ちやすくなります。
また先述した通り、新しい技術の誕生や、それに伴う変化のスピードは非常に速いです。常に最新の情報をキャッチして、時には先回り予測して対応していかねばなりません。
しかしながら、個人で情報を集めるには限界がありますので、専門家が発信する情報に耳を傾けておくことが大事です。
気付いたら配信出来ていない!!のリスクを防ぐために、正しい情報をしっかり集めて対策しましょう。
この記事の監修者: 動画総合研究所 編集部
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