2024.12.20
そもそも「動画」ってなんだっけ?(前編)
授業動画、料理動画、How to動画、テレビ動画…昨今よく耳にする言葉ですが、そもそも「動画」とは何なのか、どんなデータ構造なのか、ふと気になったことはありませんか?
知っておいて損はない、知っていると動画配信プラットフォーム提供企業の専門家も思わず唸る、「動画」そのものについて解説します。
そもそも「動画」とは何か?
動画とは、一般に、別々のデータである「映像」と「音声」を「コンテナ」と呼ばれる入れ物にまとめて格納したデータを指します。実際に、パソコン・スマートフォン向けの動画配信サービスのほとんどで、この形式が利用されています。
「コンテナって、あの物流に使われている箱のこと?」なんてお声が聞こえて来そうですが、例えば、別々のデータである映像と音声をズレなく再生するためにも、コンテナは利用されています。
もちろんコンテナの役割はこれだけではありませんし、「映像と音声がコンテナに格納された状態」というのもなかなかイメージしづらいかと思います。
今回は、「映像」「音声」「コンテナ」の観点から「動画」の構造や仕組みを解説します。
「映像」とは?
映像とは、「ビデオフレーム」と呼ばれる1枚1枚の静止画像が集まって構成されています。複数のビデオフレームを時系列順にパラパラ漫画のように表示すると、画に動きが出て映像になります。そして、映像の1秒間あたりに表示されるビデオフレームの数を「フレームレート」と呼びます。
では、仮に1時間の映像があるとして、一体どのくらいのデータサイズなのか想像はつきますでしょうか?今回は細かい説明は省略しますが、簡単に計算してみたいと思います。
条件
・解像度:1280×720(921,600画素)
・1画素のサイズ:3byte(※)
・フレームレート:30fps
・映像尺:1時間(3,600秒)
※
一般的な画像では、RGBと呼ばれる赤・緑・青の三原色を合わせることで、さまざまな色合いの表現を可能にします。それぞれの原色は8bitのデータサイズで構成されるため、その3倍の色で表現される1画素のデータサイズは24bitとなります。そして、1byte=8bitで変換されるため、ここでは1画素のサイズを3byteとしています。これは、映像や画像の処理でよく使われるYUVフォーマットでは「4:4:4」に該当します。
計算式
・データサイズ
921,600(画素) × 3(byte) × 30(fps) × 3,600(秒) = 約278GB
また、上記データサイズの「ビットレート」と呼ばれる映像の1秒間当たりのデータサイズは以下のようになります。
・ビットレート
約278(GB) ÷ 3,600(秒) = 633Mbps
これらの数値を身近な対象と比較すると、データサイズは、Appleから発売されているiPhone 11のハイエンドモデルの容量以上の大きさになります。しかも音声がついていない映像のみのデータサイズです。読者の皆さんは、普段から 278GB ほどのデータを取り扱っていますでしょうか?
また、上記計算の結果得られるビットレート 633Mbps は、一般的なインターネット回線でNetflixのHD画質の動画を視聴する場合の推奨値 5Mbps と大きく乖離しており、これではとてもではありませんがパソコン・スマートフォンで映像を楽しめそうにありません。そこで登場するのが映像の「圧縮技術」という、動画配信に欠かせない存在です。
映像の「圧縮技術」とは?
一般に、映像データを圧縮し用途に合わせて形式を変換する処理を「エンコード」と呼び、エンコードの方式を「コーデック」と呼びます。このコーデックこそが映像の「圧縮技術」の正体であり、有名なところでは、DVDや地デジなどで利用されるMPEG-2、Blu-rayや多くの動画配信サービスで利用されるH.264/MPEG-4 AVCなどが挙げられます。
コーデックは、人の視覚では認識されにくいビデオフレーム内の細部の省略や時系列順に表示される各ビデオフレームの類似点の抽出と参照等、映像に含まれる情報を効率的に削減するための特有の仕組みを取り入れることで、単純な算術的圧縮技術に比べて、大幅なデータサイズの圧縮を可能にします。
では、コーデックにより圧縮された映像データは、一体どのくらい小さくなるのでしょうか?一般的な動画配信サービスの場合を例に、そのデータサイズを見てみましょう。
前出のNetflixの推奨ビットレートが 5Mbps であることを例にとると、映像の圧縮技術により、ビットレートが 633Mbps から 5Mbps 以下、つまり1/100以下にまで圧縮されていることが分かります。
それに伴い、データサイズも 約278GB から 約2~3GB 程度にまで圧縮されます。このデータサイズも決して小さくはありませんが、多くの動画配信サービスにおいてはより低いビットレートで配信されることがほとんどで、その分データサイズもさらに小さくなります。
これならば、一般的なインターネット回線とパソコン・スマートフォンでも十分に映像を楽しめますね。
一方、過度な細部の省略等により、圧縮された映像に品質の劣化が見られる場合もあります。このような劣化は「デジタルノイズ」と呼ばれ、読者の皆さんも一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。代表的なものでは、映像がモザイク状のブロックに分割されたような見た目になる「ブロックノイズ」、映像内の物体の輪郭部分にたくさんの蚊がたかっているような見た目になる「モスキートノイズ」、本来滑らかなグラデーション部分が段階的な色の帯のような見た目になる「バンディングノイズ」などがあります。
デジタルノイズが気になる場合には、エンコードの設定を変更することで緩和する可能性がありますので、専門家に相談してみると良いでしょう。
圧縮映像は意外と身近にある!
前編では、「映像」「音声」「コンテナ」といった「動画」の構成要素とその一つである映像に関する圧縮技術について解説し、動画配信には「コーデックにより圧縮された映像」が使用されていることもお伝えしました。
技術的な話を受けて難しい印象をお持ちになった方もいらっしゃるかもしれませんが、映像の「圧縮技術」は動画配信だけではなく、ご紹介した通り、読者の皆さんが普段目にしている地デジやBlu-rayにも利用されています。昨今、4K映像をご覧になる機会も増えているかと思いますが、このより精細な高画質の映像を楽しめるようになった背景にも、新しいコーデック H.265/HEVC の登場や対応機器の普及など、映像の「圧縮技術」の進歩があります。目には見えませんが、圧縮映像は意外と身近な存在ということですね。
後編は、「音声」と「コンテナ」について解説をします。動画配信の豆知識として、ぜひお役立ていただければと思います。
▼後編はこちら
この記事の監修者: 動画総合研究所 編集部
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